「干す」んじゃない、「育て直す」んです。甚四郎のはさがけ米
田んぼから刈り取った稲は、すぐに乾燥機へ。 今の米作りでは、それが当たり前です。スピーディで天候にも左右されず、管理もラク。でも、うちはちょっとだけ、遠回りしています。
私たちが棚田で育てているお米は、「はさがけ」で天日干しをしています。 手間も時間もかかるこの工程には、ちゃんと理由があります。
■ はさがけって何?
「はさがけ」は、稲を刈り取ったあと、束にして竹や木の竿に掛けて干す伝統的な乾燥方法のこと。 太陽と風にさらして、じっくりゆっくり水分を抜いていきます。乾燥にかかる時間は、早くても10日。雨が続けばもっと長くなります。
乾燥機なら1日で終わる作業。でも、はさがけにしかない“良さ”があるんです。
■ 味が違う——香りが立つ、甘みが濃い
はさがけ米の一番の特徴は「香りと甘み」です。 天日で干すことで、米の内部にゆっくりと熱が入り、デンプンがじわじわと糖に変わっていく。いわば、“追熟”されるような状態になるんですね。
炊いたときにふわっと立ち上がる香り。冷めても感じられる自然な甘み。 機械乾燥のお米と食べ比べると、その差は歴然です。
■ 郡上・明宝の気候だからこそできる
はさがけには、実は向いている土地とそうでない土地があります。 山間地で風通しがよく、昼夜の寒暖差がある場所——つまり、郡上・明宝はまさに適地なんです。 秋になると、青い空にずらっと並ぶ稲のカーテンが揺れて、それだけで季節の風物詩。
「干してる風景そのものが美味しそう」と、地域の方が笑ってくれる。 そういう“時間”ごと届けたいのが、甚四郎の棚田米なんです。
■ 手間をかける価値
正直言って、はさがけは大変です。 稲を刈って、束ねて、運んで、掛けて、見回って、天気と相談しながら乾燥を見守る。 重労働ですし、晴れの日が続く保証もありません。
それでも続けているのは、「お米にしてから、うまい」ことがわかっているから。 食べてくれた方が「おにぎりが冷めても甘いね」「白米だけで満足できる」と言ってくれる、その一言が何よりのご褒美なんです。
■ お米も「手仕事」であるということ
「米作り」と聞くと、農業のイメージが強いかもしれません。 でも、はさがけをしていると、本当に“手仕事の延長”にあるなと感じます。 豆腐を作るのと同じで、素材と自然の力に、人の気配を添えるだけ。
甚四郎の棚田米は、収穫の喜びも、干す時間の手間も、ぜんぶ乗っけて、袋詰めされています。
■ まとめ:はさがけ米は「味」+「物語」
毎日のごはんを、ちょっと贅沢に。 大きなご馳走じゃなくても、白米そのものがうまいって、すごく幸せなことです。
「干す」んじゃない、「育て直してるんだな」と思いながら ぜひ一度、炊き立てのはさがけ米を味わってみてください。
ここにお米の画像→すとあーずにとばす