「うのはなは、捨てられるものじゃない」
——しっとり、やさしい“もうひとつの豆腐”の話。
豆腐を作るときに、必ず出てくるもの。 それが「おから」、この地域では「うのはな」と呼ばれる副産物です。
大豆を炊き、すりつぶし、搾って豆乳をとったあとに残る、繊維質たっぷりの食材。 昔はどの家にも大鍋があり、そこに野菜と一緒に炒り煮にしたり、つなぎに使ったり、あたり前のように食卓にのっていたものです。
でも今、「おから=出たら捨てるもの」になっていないでしょうか?
■ 副産物じゃなく、もうひとつの主役
うちでは「うのはな」も、しっかり商品として販売しています。 というのも——うちの豆腐づくりは、大豆をたっぷり3.5kg(22丁分)使うやり方なので、 搾りかすであるうのはなにも、ちゃんと「大豆の旨み」が残っているんです。
このうのはなに、地元の人参や油揚げ、こんにゃくを入れて、ほんの少し甘めの味付けで炒り煮にする。 水分を飛ばしすぎず、しっとりしたまま冷ましたものが最高なんです。
「え、これがうのはな?」「こんなにうまかったっけ?」と驚かれることもあります。
■ 栄養のかたまり。地味だけど、侮れない。
うのはなには、食物繊維・たんぱく質・カルシウム・鉄分がたっぷり含まれています。 現代人が不足しがちな栄養素を、さりげなく、たっぷり摂れる優等生。 しかも、消化にやさしく、お腹にもたまらない。
冷蔵庫に常備しておけば、朝ごはんにちょっと添えるだけで、栄養バランスがぐっと整います。 卯の花コロッケ、うのはなサラダ、キッシュ風アレンジ——実はレパートリーも豊富。
地味な見た目の中に、ものすごいポテンシャルが隠れている食材です。
■ 食材を「無駄にしない」ことの意味
豆腐づくりでは、どうしても出てくる副産物。 でもそれを、「出たから捨てる」のではなく、ちゃんと調理して、おいしく食べる。
そうやって全部使い切るという意識は、昔の暮らしにはあたり前のようにあったものでした。 私も父や母が台所で卯の花をつくっていた背中を思い出しながら、 「ここまでが豆腐屋の仕事だ」と思って、今日もうのはなを炊いています。
■ 「買ってでも食べたい」卯の花を
ありがたいことに、うちのうのはなを目当てに買いに来てくださる方も増えてきました。
豆腐と同じくらい丁寧に、大豆と同じだけの敬意を込めて、 もう一度、この“地味でおいしい食べ物”を見直してもらえたら嬉しいです。
■ おからじゃない、うのはなです。
「おから」と言うと、“余りもの”という響きがしてしまう。 だから私はあえて「うのはな」と呼びたいと思っています。
これは、豆腐を搾った後に残ったものじゃなくて、 豆腐と一緒に生まれてきた、もうひとつのごちそうなんです。
✍️ 次回予告:「にがりは“味”を決める」 ——固まるだけじゃない、豆腐の性格を左右する魔法のしずく。